朱里日記

❁小さな自叙伝からはじまる魂の冒険記❁

Mという人

Mと出会ったのは高校2年生、17歳の春だった。
わたしの人生の中でも、1.2を争うほどつまらなかった高校1年生を終え、あまり期待もせずに迎えた進級クラス替えで、Mとわたしは同じクラスになった。

彼女は、暗い1年間を過ごしたわたしとは対照的に、明るく、健全な、16歳らしいとても充実した日々を送ったようだった。  

Mは友だちも多く、見た目も実年齢より大人っぽく、とても落ち着いていて、知的な雰囲気の人だ。 その彼女が、どういうわけか、わたしに興味を持ち、手紙を渡してきた。  その手紙からは明らかにわたしと仲良くなりたいといった意志が感じられた。  わたしはもちろん嬉しかったが、彼女に興味を持たれた理由が自分のどこにあるのか、皆目検討がつかず、戸惑いながらも、ひとまず受け身な姿勢のまま、手紙のやりとりを始めた。   
わたしは新学期前に、当時人気のあった鈴木保奈美三上博史か誰かが出てた尾崎豊のオーマイリトルガールが主題歌のTVドラマの影響で、刈り上げ寸前まで短く切ったベリーショートに髪型を変えていて、Mがそこに興味を持ったことはのちのち聞いて知った。

明らかに似合ってないし、変だったという意味で目立ったのかも知れない。

わたしは、高1の頃、通った学校の校風や生徒の雰囲気に馴染めず、いつも早く下校して、地元の友だちとバイトに行っていた。  性格が暗いわけではなかったが、決して明るくもなく、誰とでも仲良くできるタイプではなかった。 Mのような、絵に書いたようなバランスのいい優等生とわたしが仲良くしてもらってることに、正直肩身が狭いような、申し訳ないような複雑な感情に襲われていた。  わたしたちは、手紙のやりとりを通じて親しくなっていったが、わたしは、Mが仲良くしていた友だちが、わたしたちの関係をどう思っているのかが、とても気がかりだった。  Mがわたしと仲良くすることで、彼女の光り輝く良さが消えてしまうことを恐れていた。  なぜそんなこと気にしたんだろう。  彼女の友だちとして自分は相応しくないと思っていた。 

これも結局ぜんぶ、あの時の自分が自分を好きじゃなくて、認められなくて、嫌いだったことが原因だと思う。 自分が愛せない自分を好きだと言われることは、苦しみでしかない。

わたしたちは学校内でワイワイ楽しくおしゃべりをしたり、一緒にトイレに行ったり、そういったことはしなかったので、傍から見れば、仲いいのか、なんなのかわからない不思議な関係に見えていたと思う。  しかし、わたしたちはこの歳までずっと友人関係が続いている。  彼女がわたしのことを大好きなことがわかるし、わたしもまた、彼女のことが大好きである。

本当の友だちって何だろう?

あの頃、わたしは憂鬱だった。学校に通う意味も見いだせなければ、やりたいこともない、楽しいこともない、どうでもいい日々をやり過ごしていた。 その、およそ自分という存在を肯定できる要素が何ひとつ見つけられないまま、学校という社会に黙って身を置いた。逃げる勇気など、もちろんなかった。
Mはなぜか、そんなわたしの側にいつもいてくれた。一緒に憂鬱を共有してくれた。 けれどわたしはその事実に、嬉しさより、罪悪感が増していった。

…というのが、わたしの記憶にいるわたしの実像だ 。 しかし、Mはどうやらわたしの記憶にいるわたしの実像ではない、わたしを見ていたらしい。  
それは、お転婆で、仕切り屋で、いたずらっ子で、勝気で、みんなを巻き込んで元気にさせる、、そう!あの黄金期(小4限定)のわたしを見ていたようなのだ。   
あの子は確かに魅力的な存在だった。  あの子に惹かれて友だち申請したというのなら、納得もできる。

Mは、高校卒業後、バイト代が貯まる度に、海外へ遊びに出かけるわたしを空港まで見送りに来てくれたりした。 その時に、自分の子どもの頃の一枚の写真をわたしに託した。
それは、小学校の盆踊りの写真で、Mや友だち親子がみんなで写ってる楽しい雰囲気の写真だった。 その写真の中央下には、満面の笑みで目だけ上を見て両手で握りしめたアイスキャンデーをペロリと舐めてるおちゃらけたMが写っていたのだ。
その子はわたしの知らないMだった。

けれど、Mは最初から、その、子どもの頃の自分と子どもの頃のわたしとを仲良くさせたかったのだと、その写真を眺め続けてやっと全てを理解した。

時を経て、わたしがソウルメイトと出会ったと話し出したように、Mはあの時、わたしを魂目線で見つけ出したのかもしれない。

人と人とのご縁とは何ぞや。

わたしはこの分野においては、まだまだ興味が尽きない。

そして、この分野を極めるべく、魂眼力に磨きをかけていきたい。


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この空の向こうに…