朱里日記

❁小さな自叙伝からはじまる魂の冒険記❁

送り火


夕方、ふいに実家に顔を出す。


すると、


玄関前で母がお盆の送り火をしていた。


その場にしゃがみ込み、焙烙(素焼きの皿)の


上で燃え盛るおがらを弄りながら、お父さん


のことを少し思った。


迎え火も送り火も、特に関心はなく、たまた


ま寄ったら最中で、なんとなく呼ばれたよう


な気がした。


ちょうど昨日会った子に、駅や道ですれ違う


浴衣姿の若者が多かったため、どこかでお祭


りやってのかな?と、話しかけたら、いま


靖国神社の''みたままつり''がやってますよ 


と教えてくれた。


そして今日、偶然耳にした分霊(わけみたま)


のワードの全てが繋がった。


昼間、窓から降りしきる雨をひとり眺めた。


夕方の送り火も、黙って眺めていた。


雨も火も夏の夕方も静かで好きだ。


静寂に守られている心の領域で


誰かを想う。


沢山の人々と共に暮らすこの星に


ひとりでしか行けない場所がある。



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雨に花