連続更新が危うく途切れる寸前!
この事態には理由がある。
夕方、浅草にふらっと気まぐれに散歩に行ったら、ある洒落た宿屋の店主に声をかけられた。
そこは、7月にオープンしたばかりの非常にモダンな造りの6階立ての茶室をイメージした純和風の宿だった。
店主はすこしでもこの宿屋の存在を広めたいという意向で、店の前に立ち止まった人を掴まえては、宿の中を案内しているとのことだった。
わたしも、客室を案内され、宿屋の細部に渡るこだわりの内装や小物、各階の客室を一通り見せていただき、1階に戻ってきた時には、すっかりこの宿のファンになってしまった。
店主のDくんに『ちょっと一杯どうですか?』と自然にお誘いいただき、一階のバースペースで、おすすめの日本酒をいただく。
フレンドリーなわたしは、あっという間にDくんと打ち解け、他愛ない話に花が咲いた。
そうこうする内に、素敵なマダムがおひとりで来店された。
マダムは、年を召したバレリーナのような風貌で、気品がありながらも、話しかけずらい雰囲気はなく、店主のDくんを挟んで向かいに座ったわたしたちは、さり気なく会話を始めた。
この方は、ふた月ほど前に浅草の地に居を移したらしく、日々良さそうなお店を開拓中とのことであった。
マダムとDくんと話が弾みすぎたことと、久しぶりに飲んだこともあり、気がついたらこんな時間になっていたので、ちょっとズルいけど、続きは明日ということで!
今日もよい一日でした 乾杯🍻
粋なつまみ🍶イレギュラーメニューです
※初の試みですが、日をまたいで更新したいと思います↓
マダムはかつて、スナックや、小料理屋、喫茶店などのお店を経営していたとのことで、「なんとお呼びしたら良いですか?」と聞いたら、『ママでいいわよ』と仰った。
面白かったのは、ママは会話が弾みだし、調子が出てくる度に、Dくんに『お漬物ある?』とか『梅干しある?』と、唐突に聞いて、Dくんは戸惑いながらも、いろいろササッと気の利いたおつまみを用意してくれたこと。
そろそろ帰らないとね~という時に、ママは『なんかしゅりちゃんにお肉みたいの食べさせてあげて!』と、またもや無茶振りも無茶振りな要求をDくんへ出した。 さすがにお肉は出てこないだろうなぁ~と、見守っていたら、なんとDくん、牛肉の八幡巻を出してきたのだ!最初はおつまみは柿の種って言ってたのに…笑(もちろん通常メニューにはない)
''できる子だな''と感心した。
ママは、とても素直な人で、さっぱりしているのに、温かい優しさに溢れた人柄だった。
わたしたちは世代を超えて、自分たちのマイライフを語り合い、お互いに、ときに共感し、ときに感動し、ときに感想を言い合ったりした。 ママは『しゅりちゃんとわたしは似てるわ。』と言ってくださり、わたしも話を聞きながら、本当に似ているような気がしていた。
ママは、仕事を辞めたストレスで最近病院通いをしていると言い、今日も医者にお酒は控えてくださいって言われたけど、''そうは言われても一杯飲みたくてさ''と、家を出てきたんだそう。 昨日は昨日で、ビール10杯くらい飲んだそうで、それを聞いてわたしは率直に「またお店やったらいいじゃないですか!それだけ元気ならまだまだ十分現役でいけますよ。」と、背中を押したら『そうかしら?』と満更でもなさそうだった。
ほんとに人は歳じゃないなぁ~と思う。
福島の原発事故が起きたとき、突然仕事(畑や農作業など)を奪われた人生の先輩方が、東京など慣れない土地に引っ越すことを余儀なくされ、気力を失っていく様子をTVで見たことを思い出した。
人間は死ぬまで人間活動をしていくことが生きる気力となり、その人の命を輝かせるのだと思う。 単純にお金があっても幸せとは限らないのは、安定の中に浸かっているだけでは、人に感謝する機会も生まれないし、与えられないからだと思う。 お金があろうとなかろうと、命ある限り、好きなことをしたり、働いたり、誰かとコミュニケーションをとったり、動けるうちは忙しなく動き回ってこそ、感情は生き続けるのではないだろうか。
沢山楽しいお喋りをして、ママの命はまだまだ生きたがってるように感じた。
わたしは、30歳も年上のお姉さんがなんだかとても可愛らしく思え、ハグして激励した。
Dくんの丁寧なお見送りを受け、わたしたちは店をあとにした。
駅までママは''危ないから''と言って、そこはわたしの方が子どもということで送ってくださった。
ガラス窓のついたエレベーターでホームへ降りていく時、ずっと笑顔で手を振ってくれていたママは、つい数時間前に見た時より、ずっと明るいイキイキとしたいい顔になっていた。
一期一会
#ryokan asakusa