朱里日記

❁小さな自叙伝からはじまる魂の冒険記❁

映画

久しぶりに映画を見ようと思う。


岩井俊二の『ラストレター』だ。


高2の頃、友人Mに誘われて、渋谷の映画館で岩井俊二の『Love Letter』という映画を観た。

中山美穂豊川悦司が主演のあれだ。

岩井俊二という人の作品の世界観は美しく、少女が惹かれる、メルヘンというか、ファンタジーというか、ロマンティックというか、ノスタルジックというか、まあ、そういった綺麗な要素が沢山散りばめられていて、わたしなんかもそれに惹かれたひとりだったが、10代のあの頃、そういう自分の気持ちに素直になれなくて、食わず嫌い的な反応をしていた。Mが誘ってくれなかったら、恐らく映画館へ足を運ぶことはなかっただろう。


わたしは今でもはっきり覚えている。


映画も終盤、佳境に差しかかる頃、ヒロインである中山美穂演じるひろこが、死んだ恋人が眠る山に向かって

『お元気ですか。わたしは元気です。』

というセリフを、震えながら大声で何度も叫び続けるシーンを前に、生まれて初めて、訳もわからず嗚咽しそうになる自分を必死に堪えたことを。

隣の人に知られたら恥ずかしい、という思いも超えて、正直、堪えきれずにうわっとなってしまった。

思春期ど真ん中の自分的には、それは最高にダサい自分の姿だった。


けれど、その強烈な体験により、LoveLetterという映画は、わたしの人生のなかで、今も変わらず一番好きな映画であるのだ。

あの映画のなかで生きて死にたいと思うほど、あの映画の世界の全ての要素を愛している。


時を経て、ラストレターという映画が公開されることは、一昨年くらいに知ったが、数日前、公開されたことを今日知った。


ラブレターは、映画だけでなく、わたしの人生に欠かせない大事な大事なパーツのひとつだ。死ぬまでに、どれだけ大切な人へ大切な想いをしたためられるかは、この人生へ賭ける想いのすべてだ。


愛を表現すること。

手紙という魔法。


わたしのラストレターはいつになるだろう。


その日を楽しみに生きていきたい。



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貴方へ