切ないという感情が昔から好きだった。
胸がきゅっと締め付けられるような、自分の内側で感じるあの説明のできない気持ち。
絵本を読んだ時
歌を聞いた時
演劇を見た時
誰かを思い出す時
風のなかに金木犀の香りをみつけた時
いつかの記憶が甦るたびに、
身体中に広がっていく切なさの波。
今日、なんでもない瞬間に、
「あぁ、なんてしあわせなんだろう。いい人生だったなぁ~。後悔は何も無いな。」
自然とそんな想いが湧き上がった。
あれほど叶える夢があると言っておきながら、わたしはいまも十分しあわせで、いつ死んでもいいと思えたのだ。
自分の役目は終わったような、そんな切なさがじんわりと心を満たした。
誰かの何かという役目を、ひょっとしたら、自分では無自覚のうちに成し遂げていたのかもしれない。
切ない。
自分ひとりではもうどこにも行けない、どこにも行く場所などない、そんな思いに囚われてしまった。
流れに身を任せ、運ばれる命の行く末を高い場所から眺めていたい。
いまの自分には想像すらできない場所へ気がついたら辿り着いているかのように。
秋の深まりと共に、切なさも深まる。
……切な